北海道・音更(おとふけ)から「草森通信」21号が届きました。
創刊は2016年5月31日でした。早いもので6年目を迎えた21号です。
ボランティアの方々の記事にも、年輪を感じてしまいます。
今号のトップに、蔵書展と写真展を開催しますという記事があって、驚きました!
蔵書展は「追憶」がテーマ。いつもながら、どんな本が選ばれるのか興味深いです。
写真展は、初めてです。
昨年暮れに大谷短大にお送りした草森さん撮影の写真群の中から、十勝の町並みのものを選りすぐってとか。楽しみですね。
そこで今回は、「草森通信」21号のご紹介と、草森紳一のこれまでの写真情報を。
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草森紳一自身が撮った膨大な量の写真たち
機械が苦手の草森さんが、簡単なコンパクトカメラを購入したのは1981年頃でした。
散歩のついでに、パチパチと写したものが何点になるのか・・・「草森通信」21号によると、東京から届いた写真は10,658点になるとか!
東京に残っているものを500点(数えていませんが)とすると、合計約1万1000点。いえ、1万2000点位にはなるかもしれません。
蔵書と同じで、写真も生き物のように増殖していったのでしょう。
大谷短大にお送りした写真約1万点は、町の写真屋さんでプリントしてもらったL判かKG版の紙焼きです。自転車、水に浮くもの、箒、トルコ紀行などとジャンル分けされてお菓子箱や缶などに整理されていました。
撮ったときにはアルバムに貼り、その後、原稿を書く際に必要なものを焼き増ししたと思われます。
ですから大学にお送りしたものとは別に、段ボール箱28箱分のアルバムが東京に残っているのです・・・
俺は物書き。写真展の企画にはのらない。
いつごろだったか・・・80年代の半ば頃ではないかと思うのですが、
「玉田が俺の写真、絶賛! 写真展やろう!って言われたけど、俺は写真家じゃあないからね、そんなことできないよ」と言われたことがありました。
玉田顕一郎氏は、元「ロッコール」編集長でニコンの仕事もされ、多くの写真家を世に出した人でした。
草森さんは60年代半ば頃から、彗星のように次々と現れる若き写真家たち(立木義浩、大倉舜二、篠山紀信、森山大道、浅井慎平等々)の未来を予言するかのような評論を「カメラ毎日」などに発表しています。玉田さんが言ってくれたのは、ちょっとうれしいけれど、自分は物書きであって写真家ではないという意識は当然だったでしょう。
もしフトその気になって写真展をやっていたら、どうなっていたでしょうか。
仲の良いカメラマンたちにボコボコにされていたでしょうか。それともますます、崇拝されたでしょうか??
80年代後半からは、文章と写真のコラボを著書の中で。
80年代半ば以後、文章と自分の写真をコラボさせた『コンパクトカメラの大冒険』(朝日新聞社・1987)や『随筆「散歩で三歩」コンパクトカメラの新冒険』(話の特集・1992)が出て、散歩と写真と言えば草森さん、と散歩についての取材を受けることも増えたようでした。
筑紫哲也さんの「NEWS23」で、筑紫さんと草森さんが、池のほとりを黙々と歩いているシーンを今、思い出しました。散歩について語りつつ歩くはずが、二人ともただ黙々と。
テレビや対談は苦手な草森さんですが、大著『散歩で三歩』が少しでも売れるようにと決心して出演した結果・・・版元(話の特集)の矢崎泰久さんもハラハラされたことでしょう。一般視聴者はチャンネル切り替えたはず! そんなこともありました。
草森サイトに、「目玉の人 草森紳一と写真」(大竹昭子)を連載
草森さんが亡くなった2008年、鶴本正三さん(AD、プロデューサー)らが「草森紳一全仕事」の展覧会を企画され、お仲間の写真史の先生が写真を見に来られたことがありました。
「面白いです。草森さんの写真は、写真というものの原点を思い起こさせる」と言われた言葉も印象に残っています。
当時は膨大な蔵書整理の只中でしたし、展覧会は早すぎたのでしょう。残念ながら実現はしませんでしたけれど。
そして翌年の2009年、「蔵書整理プロジェクト」の作業が 〈 目録入力 〉 に入った段階で、中心になっている円満字さんと中森さんが「宣伝しましょう!」と、サイトとブログを立ち上げられたのでした。
年譜に全著作の紹介まで、詳細な草森サイトです。旧知の大竹昭子さんに草森写真に ついてのエッセイを依頼。彼女は90年代、自著のためカメラ雑誌の調査をしたことがあって、その時、草森紳一の写真評論に遭遇。「草森さんの写真の本を出して欲しい」と言っていました。忙殺のときで、それきりになりました。
草森サイトのために大竹さんが書いた連載のタイトルは「目玉の人 草森紳一と写真」。連載全8回を読むことができます。
「本は崩れず 草森紳一写真展」を旧森岡書店で開催
2011年の夏、日本橋・茅場町にあった森岡書店で「本は崩れず 草森紳一写真展」を開催。元担当編集者・西口徹氏のご紹介でした。
会場はレトロなビルの一室。真っ白に塗られた壁に、L判サイズの草森写真を自由にペタペタ張っただけの写真展。
ある雑誌の編集長が、「え~~っ、いいのお?! 草森さんに叱られな~い?」と言われましたが、気取りのない、遊び心いっぱいの展示は、きっとご本人に気に入ってもらえるとみんなが思いました。
森岡さんらしいおしゃれなテイストに加え、矢崎泰久+南陀楼綾繁さんの楽しいトークイベントもあって大入り。
当時の様子を、ブログでぜひ見てください。
写真展評「歩く人、穴の人」(阿部嘉昭)をいただく
会期中、蔵書整理の中村健太郎さんから、ナント「草森さんの写真展、阿部嘉昭さん(評論家)が見られてますよ」とメールが届きました。即、原稿依頼!
中村さんを通して、展覧会評の執筆をご快諾いただき、ブログにアップできたのは、とてもありがたく、うれしいことでした。
その他、写真の話題はまだまだあると思うのですが、今日はここまで。慣れない入力作業は大変です。申し訳ありません。
台風が東京、東北を過ぎて北海道に向かっています。
皆さま、くれぐれもお気をつけてお過ごしください。
十勝での写真展のチラシもご紹介しておきます。お近くの方はぜひご覧ください!!