その先は永代橋 草森紳一をめぐるあれこれ

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。 このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。写真 草森紳一

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。 写真 草森紳一

去年の10月は、台風とともにドイツからきなこさん来日!  

  今年はコロナに伴って次々と大きな出来事が起こり、怒ったり、悲しんだりしているうちに、アッという間に1年が終わりそうです。来年はどうなるのでしょうか。なんとか楽しく乗り切りたいものです。 

 去年の今ごろは、大型台風19号が東京を直撃するというので戦々恐々の日々でした。

   田園都市線二子玉川の近くでも川が氾濫して水が出たのですが、駅から10分の坂口さん(仕事仲間)のご自宅に引っ越し荷物を置かせていただいていたため、彼女は迫りくる水の防災情報を聞きながら、貴重な草森資料が入ったいくつもの段ボール箱を一人で地下から2階に避難させたと言います。重かったでしょうに!本当に感謝!!

  そんなすさまじい暴風雨とともに日本にやってきたのが、草森さんの神戸時代のガールフレンドきなこさんでした。

 中国の方で、慶応講師時代の草森さんの教え子。また日本での身元引受人は李賀の研究者原田憲雄先生です。きなこさん(江綺娜)に回想集『草森紳一が、いた。』に寄稿していただいた折には、原田先生にも大変お世話になりました。

 きなこさんに初めてお会いしたのは、2018年ドイツの高校生たちの引率で来日されたときで、ランチをご一緒する時間しかありませんでしたが、すぐ打ち解けて娘共々猛烈おしゃべり。とてつもない生活力と知性とかわいらしさと霊感に魅せられて、次回はぜひ泊りに来てねとお伝えしてあったのです。

  そして2019年10月末、台風一過の翌日、永代橋を3人でそぞろ歩き。

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当時、永代橋は改装工事中。覆いがクリストの作品のようで美しい。しかし隅田川の水量がここまで増水していたとは。

 草森さんが住んでいたマンションにも案内すると、なんとエントランスが改修されてオートロックに変わっていました。 お世話になった管理人さんにもお会いしたかったのにショック~~!と言い合ったその数秒後、ドアが開いて、中から出てきたのは着物姿の深川芸者とおぼしき年増の女性。私たちはスルリと中に入ってエレベーターで7階へ。草森さんが終の棲家から日々眺めていた永代橋を、きなこさんにお見せすることができたのでした。

  久々の草森マジックは、あちらからのきなこさんへのサービスでしょう! しかも深川芸者をあしらうなんて、草森好みです。大柄な女性で時代遅れのマスカラ・メイクでじろりと見下されたときの視線は忘れられません。

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左から:水嵩の増した墨田川。 大きなマンションが建って永代橋が見えない。建つ前に引っ越ししたいと草森さんは言われていたが・・・  

 門前仲町散策の数日後、有楽町の「炉端」できなこさんを囲む女子会。店主の井上さんも、ばばみやこさんもお変わりなく、楽しい会でした。

 慶応大学中国文学科の岡晴夫先生(草森さんの1年後輩)は、彼女のことを「よく憶えてますよ~!」と。ちょうど朝日ホールで公演中の越劇の世話人でいらしたので、きなこさんも観劇に行かれて40年ぶりの再会を果たされたのでした。

  今年はコロナの影響で、きなこさんの来日はかなわず残念でした。来年を楽しみにいたしましょう!

 

崩れた本の山の中から 白玉楼中の人