中公文庫『随筆 本が崩れる』(2018年)
昨日のブログでご紹介した「草森通信9号」に、『随筆 本が崩れる』の文庫が紹介されていましたので、あらためて再度ご紹介!
●中公文庫の付録
2005年に文春新書で出版されて版を重ね、2018年11月に中公文庫に仲間入りしたとき、以下の魅力的なエッセイ5本が付録として巻末に加えられました。
1)「魔的なる奥野先生」 『奥野信太郎回想集』三田文学ライブラリー 1971年
2)「本棚は羞恥する」 室内 1972年7月号 (『狼藉集』1973年所収)
3)「白い書庫 顕と虚」 初出調査中 (『見立て狂い』フィルムアート
社1982年所収)
4)「本の精霊」 室内 1984年4月号
5)「本の行方」 NOMAプレスサービス 1992年1月5日号
解説「六万二千冊の「蔵書にわれ困窮すの滑稽」」平山周吉
平山周吉氏は、晩年の草森紳一に伴走した名編集者で、新書『本が崩れる』を生み出した方。草森紳一の誕生から急逝までが、少ないページ数の中に盛り込まれていて好奇心が尽きません。
●写真は発売直後の東京堂でのパネル展示です。
入り口カフェの前面、下は店内。
●亡き坪内祐三さんの書評
(「週刊文春」 日付は、引っ越しのどさくさで今わかりません)
● 『朝日新聞』の書評欄(2018年12月15日)
コロナ禍のこの時期、 「人も樹木も、生き延びるとは」という見出しにあらためて惹かれ、朝日の書評もご紹介。
「東直子が薦める文庫この新刊!」――人も樹木も、「生き延びる」とは
(1)『四人組がいた。』 高村薫著 文春文庫、
(2)『随筆 本が崩れる』 草森紳一著 中公文庫
(3)『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』 ペーター・
ヴォールレーベン著 長谷川圭訳 ハヤカワノンフィクション文庫
(2)は、今にも崩れんばかりに本が積み上がっている表紙の写真が印象的だが、著者の自宅らしい。2LDKのマンションに、何万冊もの蔵書をため込み、崩れてきた本に閉じこめられて身動きができなくなる。危機的状況の中から、なぜこうなったかをじっくり念入りに思考する様には可笑(おか)しみもにじむ。昭和時代を生き抜いた博学の書き手の独自のこだわりや哲学が、文章の端々に味わえる。「空虚は、もともと東洋の最高の道徳だが、この肉も骨もなき空虚に日本人は、どう慣れ合っていくのだろう」という1999年に書かれたふとしたつぶやきのような一文に、立ち止まる。 (東直子)