その先は永代橋 草森紳一をめぐるあれこれ

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。 このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。写真 草森紳一

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。 写真 草森紳一

蔵書と映画について、筆者の魂が伝わる名著2冊


『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』(松籟社)は、去年7月に出版されて話題になったのでご存知の方も多いと思います。著者、紀田順一郎氏は、草森紳一が慶応大学時代に所属していた推理小説同好会の先輩。卒業後、商事会社に就職なさったものの、当時まだまだ日本には紹介されていなかったミステリ、幻想怪奇文学、SFの分野に関心を深め、30歳でフリーランスの物書きに。
以後、増殖し続ける蔵書の保管に苦慮しつつ、とうとう蔵書を手放すことになったいきさつとその背景にある社会の変化、それらとともに戦時下に蔵書を守った人々などについても丹念に書かれています。
80歳になった紀田さんが蔵書処分を断行した日を描いた「序章 永訣の朝」は、胸を締め付けられ涙があふれます。


『祝祭の日々 私の映画アトランダム』(国書刊行会)は今年2月に刊行されたばかり。清流出版のHPで長く連載された人気コラムでした。このコラムを初めて読んだとき、「エッ、この書き手は誰?」「60年代(から)の物書き?」と思いました。60年代以降の映画はもとより音楽や文学など時代背景がまるで目撃したかのように描かれ、その渦中にいた伝説的な人たちとの交友も生き生きと語られていて、久しぶりに懐かしくタイムトリップの気分で興奮したのです。
著者の高崎俊夫氏は、名編集者、名ライターとしてキャリアのある方で、私の想像よりぐっと若い方でした。
「映画館の中で映画を見る」時代と人と映画そのものにオマージュを捧げた名著です。

この『蔵書一代』と『祝祭の日々』の文中に、草森紳一が登場しています。ぜひ探してみてください!

崩れた本の山の中から 白玉楼中の人