今年NO.1の話題作と言われる梯久美子氏の『狂う人』。
北海道新聞社の記者の方から、「梯(かけはし)さんの新刊の中に草森さんが出てきますよ」とお教えいただきました。
「狂う人」とは、島尾敏雄の妻、ミホのこと。夫妻の膨大な未公開資料にあたって不可解な夫婦の関係を描き尽くした600頁を越える大作です。
第一章 戦時下の恋 の文中に以下のように書かれています。
「昭和38年の『婦人画報』五月号に、戦時中の往復書簡とともに掲載された島尾夫妻へのインタビュー記事には、加計呂麻島で島尾がミホに「戦争がすんだら、蒙古に僕と一緒に行ってくれますか」と言ったというエピソードが出てくる。この時のインタビュアーはのちに評論家となった草森紳一で、数回にわたって奄美を訪ね、戦時下の恋物語を聞き出している。二人を説得して往復書簡を借り受け、初めて活字にしたのも草森だった。」
草森さんは奄美を訪ねたことが強烈に印象に残っていたらしく、島尾敏雄の追悼文を書きたいとよく言われていました。急逝後、初めて門前仲町のマンションのドアを開けた時、積み上げた膨大な蔵書の山から島尾敏雄の本が目に飛び込んできたのを思い出します。
鹿児島文学館には、草森紳一が島尾敏雄にあてた初々しい手紙が保管されています。奄美訪問が、婦人画報社を退職し、物書きとなるきっかけになったのではないかと思われます。
「婦人画報」 5月号と6月号。5月号には13頁分の特集を掲載。6月号には「続 隊長さまミホより」として「島尾敏雄夫妻にみる 結婚と破局と復活」8頁分を書いています。
下は5月号の特集トップページです。
それにしても昭和30年代の「婦人画報」のそうそうたる執筆陣と斬新な企画の数々には圧倒されます。