1972年11月30日、大著『江戸のデザイン』が京都の駸々堂から出版された。
「デザイン」(美術出版社)の1968年9月号から1971年3月号の連載をまとめたもの。
それまで意匠とよばれていた江戸の形や色を「デザイン」という切り口でアプローチした斬新な内容と、横尾忠則氏の装丁とがあいまって、翌年、毎日出版文化賞を受賞している。この時草森さんは、35歳だった。
『狼藉集』(1973)に「金子君の結婚を祝って」という一文が掲載されているが、この金子喬彦氏が連載時の編集長で、独立された時の仕事だったという。金子さんにとって大変だったということをチラッと草森さんから聞いていたので、回想集『草森紳一が、いた。』を作る時に、ぜひその当時のことを書いていただきたいと思った。しかし、どうしても連絡先が分からず、原稿依頼はかなわなかった。
いつも奥付を見て、その本を誕生させた背景を想像する。
『江戸のデザイン』を創られた金子喬彦氏と堀慎吉氏はどうしていらっしゃるのだろうか。
(上は、箱の装丁。中の表紙は、黄色バックに赤肌と青肌の男の相撲の絵です。目次は、草森紳一HP「白玉楼中の人」の
著作目録5番目をご覧ください。A4判のため見開きでスキャンできず、文字が読みにくくてすみません)
PS:「広告批評」(1979〜2009)の編集発行人だった天野祐吉氏が昨日亡くなられたことを今知って、とても驚いている。
アングラの60年代が去って70年代はデザインの時代だった。CMや紙媒体の広告もデザインの力で洗練されていき、バブルの80年代を迎える……
戦争の時代を体験し世相を俯瞰して見つめ、大きな視座で発言できる人がまた一人いなくなった。
このきな臭い時代に、本当に残念に思う。
草森紳一の『中国文化大革命の大宣伝』(2009上下巻 芸術新聞社)の原稿初出は「広告批評」。上巻に跋文を書かれている。
ご冥福を心よりお祈りいたします。