その先は永代橋 草森紳一をめぐるあれこれ

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。 このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。写真 草森紳一

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。 写真 草森紳一

草森紳一書き出し劇場11  『旅嫌い』


本の運命はさまざまと思う。この『旅嫌い』の発行は1982年4月10日。マルジュ社という出版社から出て、朝日新聞の書評欄で大きく採りあげられていたのを憶えている。女性作家による、とても印象的な評だったけれど、なにせ30年前のことなので、名前がはっきりしない。姓の頭文字はTではなかったか……う〜〜ん……。
しかしすぐに出版社が倒産してしまったのだった。

本書には、旅の写真がたくさん挿入されている。
スリランカ・蝶の旅”では大倉舜二氏の写真が16見開き、横浜・伊勢佐木町のPR誌「Drop in ISEZAKI」から転載の“横浜がよい”では、相原亨氏の写真が24点、その他一村哲也氏など。
本文には普通の書籍用紙が使われているため、写真のクオリティがとても気になるものの、当時としてはぜいたくな本で定価は3500円。

版元が危ういからと、おわびとともに写真料などの請求について、ていねいな手紙をいただいたと写真家の相原亨さんが『草森紳一が、いた。』に書いていらっしゃる。
元編集者の草森さんとしては、ご依頼したものについては責任を果たさねばの思いだったのだろう。

写真に文章も楽しいけれど、「旅の裏切り」という『旅行アサヒ』のためのインタビューも、率直な質問に本音が出ていて、おもしろい。
さすらいののちに、いまでは高値で古本屋さんに出ているようですね。復刻版が出ればうれしいのだけれど……

表紙は大倉舜二氏の撮影で、1976年のスリランカ。捕虫網を持つ中央の後ろ姿が草森紳一

本書の目次などは、草森紳一HP「白玉楼中の人」で見ることができます。

(見開きの画像はクリックすると大きくなります。)

崩れた本の山の中から 白玉楼中の人