その先は永代橋 草森紳一をめぐるあれこれ

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。 このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。写真 草森紳一

「もの書き」草森紳一の蔵書約3万冊は、2009年11月故郷の帯広大谷短期大学に寄贈されました。このブログでは、以後の草森紳一関連ニュースをお伝えしていきます。 写真 草森紳一

Getback,SUB!  Getback,70s!!

               
 『記憶のちぎれ雲』を出してくださった本の雑誌社から、昨日、厚い小包みが届いた。
中の本を取り出して、装丁を見た途端、「ア、70年代」と思う。スタイリッシュなデザインに、ロゴに、幅広の帯のカモメの飛ぶ海の写真やダークブルーの色に。

 それもそのはず、この本は1970年に神戸で創刊された幻の雑誌『季刊SUB』(サブ)と古本屋で出会った著者が、編集人の小島素治氏にインタビューし、氏の亡き後、多くの関係者に取材をしながらまとめ上げた“70年代リトル・マガジン”へのオマージュなのだ。北沢さんにとって最初の著作だと言うが、20年前『SUB』に出会って以来の思いがぎっしり詰まった力作。懐かしい名前がたくさん散見される。大事に読みたい。

 草森さんは70年代に神戸に住んでいたこともあって、『季刊SUB』の常連執筆者だった。
本書の跋は草森紳一で、2004年の『QJ』(クイック・ジャパン)から採録されている。別丁の浅井慎平氏による写真もとてもカッコイイ。
著者の北沢夏音さんは、音楽を中心として60−70年代サブ・カルチュアに強い関心を持つ編集ライター。晩年の草森さんとは門前仲町でよく会っていたというけれど、20歳以上年下の北沢さんとどんな昔話をしたのか興味が尽きない。

 「ア、70年代」と思って、久しぶりに草森さんの『悪のりドンファン』(テレビコマーシャルの二〇年史)を手にとる。1976年フイルムアート社刊で、石岡瑛子さんのブックデザイン。
 巻末の文章、陶淵明の詩から題をとった「千年ふたたび朝あらず 日々の終末」は、自分自身と時代の気分を映して好きなものだが、『季刊SUB』6号(1973年)の特集「朝日のようにさわやかに」が初出。ビートルズやスヌーピィについての文章は『SUB』の前身『ぶっく・れびゅう』が初出だ。

 70年代に帰りたくなる。

崩れた本の山の中から 白玉楼中の人