左は、1966年に出版された幻の本『ビートルズ東京 100時間のロマン』です。古本屋で検索してもSOLD OUTばかり。オークションでもあまり出てきません。
なぜ幻の本なのか?
ビートルズ来日の1966年、招聘元の中部日本放送(読売新聞も招聘元)が企画した本。
当時、名古屋で新進気鋭のカメラマンとして活躍していた浅井慎平氏、銀座にツルモトルームを作って独立し、ADとして活躍を始めていた天才デザイナー鶴本正三氏、マンガや写真評論のみならずアンリ・ルソー、李賀など新分野の気鋭の書き手として注目を集めていた草森紳一の三人が制作チームとして集められたものの、なんとビートルズ側の取材許可が下りていなかった!
帰国前日にやっと許可された45分間の取材写真と、武道館の公演現場、ホテルの気配など、100時間のビートルズの記憶をまとめた苦肉の本。写真点数が限られているため、中綴じのグラフ形式の冊子です。しかし今見ると、70年代の気分を先取りしたすごくオシャレな本に仕上がっていて、さすがと思います。書店販売も不許可だったため、通信販売されたそうです。
三人の方たちにとっては不本意な仕事で、草森さんは「コピーライティングだから、名前は入れないでくれと言ったんだ」と言っていましたけれど。
51年前の1966年とはどんな時代だったでしょう。64年のオリンピック前後は東京のいたるところで工事が行われていたような記憶があります。
高度経済成長の波に乗って、日本の原風景が消えていった時代です。
私は田舎の子だったのでビートルズのことはほとんど知らず、むしろ不良の音楽という印象でした。
66年ビートルズ来日、68年大学闘争、世界中で学生たちが大人にNOを突き付けた時代。
伝統的な価値観を壊して、新しい価値を打ち立てようとする運動があらゆる分野で起こりました。
ジーンズやミニスカートが思い出されますが、
時代の感性は、音楽とファッションが先導することを改めて感じます。
『ビートルズ東京』のコピーとは別に、草森紳一執筆によるビートルズ原稿10本をご紹介します。
1)ビートルズの手紙とオズボーンのマンガ
「美術手帖」1965年1月号(『マンガ考』1967年所収)
2)ビートルズの商法
「芸術生活」1965年3月号(『イラストレーション 地球を刺青する』1977年所収)
3)カゴの中の悪魔っ子ビートルズ
「カメラ毎日」1966年9月号 無署名、写真・浅井慎平
4)通俗の攻撃
「現代詩手帖」1967年2月号(『ナンセンスの練習』1971年所収)
5)なんて幸せな御時世だ やりきれないものの殺意
「ぶっくれびゅう」(特集ジョン・レノンと小野洋子)1970年4月創刊号
6)オーみじめ オーみじめ
「ビートルズソングイラスト集」1970年(『ナンセンスの練習』1971 所収)
7)ビートルズと極楽浄土
「季刊サブ」(特集ビートルズ フォアエバー)1971年2号(『ナンセンスの練習』1971年所収)
8)地上に落下したレノン
「ライトミュージック」(特集ジョン・レノン)1971年6月号
9)感傷の才能
『気分はビートルズ』浅井慎平著・付録 1976年2月刊