平井徹氏(慶應義塾大学講師)による児童を対象にした中国古典の翻訳についてご紹介したので、草森さんの最初の本(訳書)を紹介しなければ!
1967年に盛光社から刊行された『中国文学名作全集』で、表紙にも背にも〈奥野信太郎編集〉が謳われています。草森紳一が「魔的なる人」とよんだ、慶應大学の恩師です。
司馬遷の『史記』から17編の採録。表紙と本文の挿絵はなんと、『日本ナンセンス画志』、『荷風の永代橋』や『夢の展翅』のイラストの井上洋介氏。長い長いお付き合いです。どんな出会いだったのでしょうか。
すでにこの2年前の1965年、草森紳一は『現代詩手帖』に李賀の連載(垂翅の客 李長吉伝)をスタートさせています。慶応の斯道文庫に勤務しつつ、物書きとしても実績を積み始めていた矢先、翌年の1968年早々奥野教授の急逝。「人の運命を変えるような魔的な力を持っていた」奥野先生がお元気であれば、草森紳一の運命は変わっていたでしょうか。
全10巻の構成と訳者が興味深いのでご紹介しておきます。読者対象は小学校高学年から中学生。版元のキャッチコピーは「はじめてのジュニア向け中国文学シリーズの決定版!」。
内容の詳細については、『公評』2011年6月号掲載の平井徹氏の評論をご覧ください。
1『史記』草森紳一訳 2『唐代小説集』奥野信太郎訳 3『今古奇観ほか』村松暎訳 4『元曲』岡晴夫訳 5『西遊記』佐藤一郎訳 6『三国志』奥野信太郎訳 7『水滸伝』佐藤一郎訳 8『紅楼夢』君島久子訳 9『聊斎志異』藤田祐賢訳 10『民話集』君島久子