数万冊の本を前に
久々にブログを投稿し始めたら、いろいろなことを思い出します。
北海道の草森さんの故郷音更(おとふけ)では、現在も蔵書整理、展覧会、「草森通信」などの活動が継続しています。とてもうれしくありがたいことです。
音更町のご協力も得られて帯広大谷短大に寄贈が叶ったのですから、まるで奇跡のようでした。本当に皆様に感謝です。
今年は、草森紳一の十三回忌(命日は2008年3月19日)。早いものです。コロナ禍のために、法要を延期せざるを得なかったのが残念ですが。
あれから12年。数万冊の本を前に、先の見えなかった東京での蔵書整理の始まりを振り返ってみたいと思います。
草森紳一の急逝後は、その去り方と膨大な本の量に、編集者の方も遺族も悲しむと同時にただただ呆然とするばかりで日々が過ぎました。
有志を募って蔵書整理がスタートしたのは、2008年6月。九段会館で開かれた「草森紳一を偲ぶ会」の少し前でした。
引っ越し屋さんの2トントラックのそばで、紫陽花が豪華に咲き誇っていたのを覚えています。(左端の写真は、マンション7階の踊り場から見える永代橋)
本たちは、東京の門前仲町から高島平へ引っ越し。蔵書の整理場所は、駅から歩いて15分余りのところにある大きな倉庫でした。印刷屋さんの紹介で借りることができたのです。
草森さんの子供たち二人を中心に、編集者や、読者、友人たち、私の仕事仲間も加わっての整理作業。当時私は、遠距離介護の真っ只中でしたので十分に動けず、今日は何人集まるかしらとハラハラしたものです。
おもしろがりながら一歩づつ
マンションの自室にあった本たちは、本棚からあふれ、天井に届くほどに2DKの室内をくまなく覆いつくすといった状態でした。草森さんの著書に『随筆 本が崩れる』(2005年文春新書、2018年中公文庫)がありますが、本書の中で語られているより、はるかに蔵書の分量が増えていたのです。
室内に入るのも容易ではない状態でしたが、芝公園から門前仲町に引っ越した当時は(1983年)、見事に片付いた部屋でした。男の人の整理能力と潔癖に、女はかなわないなあと恥じ入ったほど。その変わりように胸が痛くなりました。
引っ越しは、まず室内のブロック分けから始めました。草森さんは、しっかりジャンル別に整理していたはずなので、今は本の前後左右にさらに、さらに積み上げられているとしても、この辺りは、中国の原書、ここは写真関係、ここは近代文学、マンガ等々、推測することができました。
室内蔵書マップではないですが、➀大まかに室内をブロックに分けて、色分け→②色分けした段ボール箱に、その部分の本たちを入れるように引っ越し屋さんに依頼→③同時に、背文字だけ、装丁の色だけしか見えない各ブロックの本たちも、写真で撮影しました。引っ越し後に参考になるようにと。
倉庫での作業はまず、➀引っ越し屋さんの入れた段ボール箱から本を取り出す→②埃や汚れを落として、ジャンル毎に台の上にまとめる→③ジャンル毎に段ボール箱に入れ直す→④写真を撮る、という順序で行いました。
みんなが集まるのは週2日の金曜と土曜。交通費は出しますとお伝えしていたのですが、経費も自前の完全無料奉仕だったと思います。10人に満たない日もあれば、20人を越えて「2日分はかどった~!」と踊る日もありました。まるで部活のような楽しい集まりでした。
猛暑とゲリラ豪雨の夏を過ぎて、8月末の整理終了日は偶然にも板橋区の花火大会の日! 倉庫会社の社長のご厚意で、ビルの屋上に座り込み、みんなで花火を見ながら打ち上げをしました。
ジャンル別段ボール箱は、この頃まだ数え切っていませんでした。のちに総数が731箱と分かり、その後、見つかった本も加えると735箱位になるでしょうか。
蔵書整理が終わるころ、草森さんの知人の方から展覧会や寄贈先の具体的な話が出ていました。そこで、少しでも目録入力を進めよう、ホームページやブログも作ろうということになりました。アイデアを出して、以後の活動を担って下さることになるのは、草森さんの担当編集者だった円満字二郎さんと、元同僚の中森拓也さんでした。
(ブログ「崩れた本の山の中から」初回に宣言文があります。https://kusamori-lib.hatenadiary.org/entry/20081207/1228630774)
目録入力は、倉庫の2階に移動。当時の重いノートパソコンを持参しての作業でしたが、それぞれ好みのテーマの段ボール箱を開けて入力に励みました。
ここは倉庫のため、机や椅子が全くないことに気がつきレンタル会社から借りたり。
倉庫料の支払いのためにも締め切りを設けての猛烈な作業でした。
左下の写真は、だれが作ったのか「穴」のテーマ! その箱に入れられた本たちです。
これらの本の奥付を開いて、書名、著者名、版元、出版年度などを入力していきます。
蔵書整理第二部(目録入力)は、2008年9月にスタートしました。美しい紅葉の季節から、新年を迎え、本たちも冷たく入力する指も凍える雪の日も過ぎ、桜並木が見事な新緑に変わるころ、入力はほぼ終了。みんなの仕事や費用のこともあって、連休前には蔵書整理を終了させなければならなかったのです。
ところが、斬新な企画の展覧会も寄贈先も、草森さんの知人の著名なプロデューサーが動いて下さっていたにもかかわらず、今一歩のところで決定していませんでした。「草森紳一蔵書整理プロジェクト」は、目的を失い、暗礁に乗り上げてしまったのです。
(次回に続く)
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◎ブログ「崩れた本の山の中から」https://kusamori-lib.hatenadiary.org/d
整理中の一冊一冊にまつわるエッセイを円満字二郎さん、Living Yello(中森拓也)さんが綴って下さっています。当時、人気ブログでしたが、古くならないのがすごい。
◎西牟田靖著『本で床は抜けるのか』(中公文庫) 本と人との抜き差しならない関係を採り上げた話題の本。草森蔵書整理の取材も掲載されています。ぜひご一読下さい。
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◎草森紳一の蔵書は、東京の自宅マンションと北海道の書庫「任梟盧」(にんきょうろ)の2か所に保管されていました。80年代以前の著作の参考資料(ナチスや李賀、デザインや建築雑誌など)は、「任梟盧」に保管されていて、全蔵書数は約6万冊余りと言われています
◎youtubeで、草森紳一の書庫「任梟盧」を見ることができます。http://www.youtube.com/user/kusamori
全7本の内容は、1/7、2/7は外観、3/7〜7/7は内観です。
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◎東京の蔵書整理あらあらメモ
2008年8月2日時点での段ボール箱テーマ別数をword4枚で残していましたので、下に貼り付けます。見にくくて恐縮です。左から2P分、下へ2P分です。(2段目のナチ以下は、特別ジャンルに入ります。
整理の際のジャンル分けは大雑把なもので、図書館の分類などによるものではありません)。 ______________________________________________________________________________________
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