持ち主が亡くなった場合、本たちはどうなるのか?
高名な作家や研究者のまとまった蔵書は、かつては故人の記念館で保存されるか、図書館や大学の研究機関に寄贈されて、公の遺産として活用されたものです。
しかし最近では、増え続ける本の保管場所に窮し、寄贈された貴重な蔵書も廃棄、というショッキングなニュースを耳にするようになりました。
本の持ち主が亡くなれば、蔵書も処分されて仕方なし、いや、残すより、敢えて処分した方が良いという考えの人もいます。
しかし、本の寿命は100年。和紙の本なら1000年です。(紙と製法によりますが)
持ち主が亡くなっても、書物の本来の使命を果たしつつ、寿命を全うできる環境があればと思わざるを得ません。
そんなことを思うと、草森紳一の故郷に帰り、帯広大谷短大の先生方と地元の蔵書整理プロジェクト(ボランティア)の皆さんとのご尽力により管理されている草森蔵書は、本当に幸せ者と思います。
8月に帯広市図書館、10月に音更町図書館で開催された、草森蔵書の写真集の展示を企画された、吉田館長からのメールをいただきましたので、一部ご紹介します。
「(NHKニュースの放映について)ディレクターさんは、放送は1分程度だけど‥とすまなさそうに言いながら丁寧に取材をしてくれました。
自由に手に取って見ていただけるようにしたため、ボランティアさんの殆どはそれぞれ2時間を区切りとしてスケジュールを組み、間違いがないよう交代で監視について下さいました。
親の介護中のKさんも時間を作って協力して下さいました。こんな方々の協力があって、展示会が開催できます。
開いて見られるようにしたことが良かったのか、用意した椅子に坐ってじっくりご覧になって行かれる方、ご夫婦で1時間近く話をしながら写真集を開いていた方などがいらしたと報告をもらいました。
ガラスケース越しに眺めるだけじゃなくて、開いて見たい、触ってみたいと思うのは本好きなら同じ気持ちのようです。
アンケートにも記載いただきましたが、こんな機会を通じて草森さんへの関心が高まれば嬉しいのですが‥。
できれば来年も別の展示を密かに考えています。」
楽しみです! よろしくお願いいたします。
*ニュースの冒頭に浜田蜂朗氏の写真集が写りました。浜田氏は『現代の眼』編集者を経て、写真家、ライターとして『芸術俱楽部』『写真時代』で活躍され、1996年死去。この『殺風景』は、没後に朝倉喬司、石塚恵子、草森紳一、末井昭、西井一夫、森山大道の6名の友人たちにより刊行されたものです。右手のアルバムは、草森、浜田、石塚と3人で出かけた旅の写真から。左が浜田氏、右が草森さん。1990年代初めでしょうか。撮影は石塚恵子さんで、3人一緒の旅は本当に楽しかったと聞きました。草森蔵書が残され、展示されたおかげで、浜田蜂朗氏のことにも思いを馳せることができました。